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大魔王の子を孕みます
第10章 新月



こういうところはライズと同じかよ…。

ガックリと項垂れる俺の頭上で声がする。


「真面目に仕事をしないメイドだな。」


見上げれば、薔薇の壁の上に優雅に座る男が居る。

うげーっ…。

薔薇背負って似合う男ってマジに存在しやがる。

つまらない事でムカつく俺はライズを無視して薔薇の花を木から毟りとる。


「痛っ…。」


綺麗な薔薇には棘がある。

花なんかに興味がない俺はそんな事を忘れてた。

ライズがふわりと薔薇の壁から降りて来て俺の指先に棘が刺さってないかと確認する。


「棘なんか刺さってないから大丈夫だ。」


ライズに触れられるのが怖くて、その優しい手を振りほどく。

そりゃ、億も生きてりゃ女の1人や2人や100人が居てもおかしくはないだろうさ。

それでもライズの昔の女とか知りたくなかったし、ましてや妻と呼ぶ女の為に俺に薔薇を集めさせるとか酷いと思う。

目頭が熱くなって俺の視界が歪み出す。

また泣くだけの女だと思われるのが悔しくて絶対に泣いてやらないと歯を食い縛る。

そんな俺の髪にライズの手が触れる。

俺の髪に棘を取った薔薇の花を簪のように刺してからライズが髪に口付けする。


「シロは薔薇が似合う。」


キザな褒め言葉にフンッとそっぽを向いてやる。

ライズの言葉を聞いてライズの顔を見たら我慢してる涙が一気に溢れそうな気がする。


「私の奥様のご機嫌が斜めだ。」


嘆くようにライズが言う。


「だったら、俺なんか放っておいて奥様のご機嫌を取れよ。」

「そのご機嫌を取りに来たんだが、どうやらシロは機嫌を治す気がないらしい。」


ライズの指先が無理矢理に俺の顎を掴んで俺の視線をライズに向けさせる。

卑怯だっ!

ギュッと目を閉じれば瞼にライズの唇が触れる感触がする。


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