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蕾は開き咲きほこる
第3章 課長の素顔
人づきあいが苦手な私に取って、社員旅行とは苦痛の時間でしかない。
四六時中誰かと一緒にいるというのは拷問に近く、特に旅館ともなれば相部屋が基本で人の輪に入れない私は逃げるように部屋を抜け出し、部屋のみんなが寝静まるのを待つだけだった。
お客さんが数人いた売店も閉まり、ロビーには誰もいなくなり静かになる。
時々ロビーを通る仲居さんに変な目で見られるのが嫌になって外に出ることにした。

「さむっ」

息を吐けば白い煙が暗闇に消えて行くほど冷え込んでいて、両手で自分の身体を包み込んで寒さを凌いでもその寒さは身に染みた。
だからと言って部屋に戻りたくもないし、歩いていれば少しは温かくなるんじゃないかと散歩をすることにした。
何もない道路をカランコロンと下駄を鳴らして歩く音が妙に心躍り、川を流れる水の音が耳に心地よく、満点に広がる星空を見上げながら上機嫌になる私は自然と鼻歌を歌っていた。

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