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リップ・エレクト【完結】
第1章 女上司はタラコ唇~~💖
二人の誘導



「…いいえ、やはり選択のリミットは迫ってますから、今回は明日のミーティングで風間案の可否をもって、本社予算枠を要求してのレジェンヌ積極マーケティング戦略を取るかどうかを決しましょう。ただし、今日この場で皆によって、レジェンヌを二課の命運をかけての勝負どころと捉える方針で一致したわ。それなら、多少のリスクを承知でも果敢にチャレンジという姿勢が前提になる。そこをまずは胸に刻んで、風間君のプレゼンと向き合ってください」


「はい…」


「その上で、皆さん判断を出してもらいましょう。…それで、何しろ私もこのレジェンヌには精魂を込めて作り上げた自負があるので、最終の方針決定は多数決ではなく、私が決めるってこといいかしら?」


「異議なし!」


「賛成です…」


「私も…」


”アハハハ…、中原課長の一本勝ちだ。ヤマダのヤツ、何ともな顔して苦笑いだし”


***


「じゃあ、この件はこれまでにして、後は楽しくやりましょう。ああ、ナカダ主任、改めて乾杯の音頭頼むわ」


「ええ、では…」


ここから会合は一転、懇親会モードに入り、和やかな談笑の場となった。


「…風間君、さあ、今日は精をつけて。明日のプレゼンは期待してるから。…もどったライン入れる。いい?」」


中原アキはトシヤの座っている席の後ろから、ビールを注ぎ足しながら、後段は彼の耳元に顔を近づけて小声でだった。
アキの意図するところを瞬時に悟ったトシヤは、”はい…”と目で会釈したてから、言葉を発した。


「ああ、すいません。課長…、今日のレジェンヌですよね?」


「あら、わかった?」


「ええ。何しろ試供品を渡された日、家で僕も唇に塗って、それで、鏡と2時間睨めっこしてました、なので、この光沢加減が目に焼き付いているんで…」


「そう…!風間君のレジェンヌ戦略は、そこまでこのリップと向き合ってくれた上でってことね」


レジェンヌ生みの親である女課長は、思わずうれしそうな表情を浮かべたが、すぐに抑えを利かせ、すかさず皆に聞こえるような声で、”明日”を念頭に置いた伏線を張った。
そして、この場の男性職員5人は女上司の発信を正確に受け取っていたようだった。


***


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