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瀬音とボクとよしみくん
第39章 よしみくん
しかし、良実くんは見つからなかった。


日は暮れ、大学の構内の人はまばらに。


探し疲れて地面にうずく待っているところに瀬音くんがやってきた。


「なにやってんだ、こんなところで」


「なにって……」


「学生課に聞いてみればいいだろ」


「あ、そっか、ありがと瀬音くん」


疲れはてていたけど、瀬音くんの言葉で、もう一度気力を振り絞って立ち上がった。


ボクたちは、学生課にいき、良実くんのことを聞いてみた。


慌てて、しどろもどろの説明になっているボクを見て、学生課の職員は怪訝そうな顔をしている。


「……事情はよく、わかりませんが、個人情報ですので、お答はできません」


「え、なんで?」


なんで?
どうして?
詰め寄って聞いても学生課の職員は表情を崩さない。


「無理ですから」


そんな様子を後ろで見ていた瀬音くんに、ボクは目で助けを求める。


「別に、個人情報を聞きたいんじゃないんです。桜川良実という人物が大学にいるかどうかだけでいいんです」


瀬音くんが、ボクと職員の間にはいってきてくれる。


「ですから、それも個人情報となりますので……」


それでも、教えてはくれない。


職員は、これで終わり、かのように事務作業に戻ろうとする。


それを瀬音くんが呼びとめて、なにやら職員に耳打ちをする。


困ったような顔をした職員は、あきらめたようにパソコンのキーボードを打ち始めた。


さすがは瀬音くんだ。


「そうですね。その~桜川良実さんという方は本大学には、やはり在籍しておりません」


「え? まさか……もっとよく調べて……」


あきらめきれないボクを、瀬音くんは無理やり外へと連れ出す。


「なんで?」


「わかったろ。見間違えだったんだよ」


「そんなわけ……」


「いったい、この東京に何人いると思ってるだよ。たまたま似てただけだろ。良実のはずが……」


ボクはあきらめきれなかった。
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