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きっかけは十人十色
第8章 帰り道
口づけを交わした後で気恥ずかしさはあったが、「送るよ」と言ったら「うん、ありがとう」と素直に答えが返ってきた。夜道は危ないからというのと、もう少し一緒に居たかったからというのが本音だ。
「…ふーん、柴崎さんは4丁目ね。私は6丁目だから、そう遠くないってことか」
「そうだね。会おうと思えばすぐに会える距離かも」
「…」
「あ、ごめんっ!調子乗った…」
黙って流されそうになって、焦って詫びの言葉を言った。
「結構分かりやすい、柴崎さんって」
クスクスと笑いながら図星を指されて、顔に熱が集まるのが分かった。
幸い夜だから、頬や耳の赤みはバレないはずだ。
でも木山さんも表情に出るから、似たようなものじゃないか?
少し上手な感じは否めないが。
「…あ」
ふと思いついたような声を上げて、木山さんが歩みを止めた。
「どうしたの?」
「今さらだけど、ちゃんと自分の名前言ってなかったなって思って」
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