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嘘の数だけ素顔のままで
第5章 去勢【4】

パソコン教室の駐車場にヒタチノゾミの車はまだあった。レジ側の真裏にもう一台が停まっている。
『先生』がどんな車に乗っていたのか知らないことにコトブキはこのとき初めて気がついた。そこに停まっていた車は灰色のトヨタのハイエースバンだった。
玄関で靴を脱いだとき建物全体が外と較べて薄暗いことにコトブキは気がついた。コトブキは、おつかれさまです、と声に出さずに言った。教室は誰もいなかった。薄暗いのはブラインドウを全部下ろしているせいだとわかった。
ヒタチノゾミの私物は机にひろげられたまま残っていた。パソコンもつけっぱなしだ。コトブキはヒタチノゾミのスマホを見つけて自分のスマホを探しにきたことを思い出した。スマホはコトブキの使っているキーボードの影にあった。
ヒタチノゾミのパソコンにはタイピング練習サイトが表示されていた。
物音がした。
コトブキは思わずスマホを机に落とした。机のうえで振動するスマホを慌てて押さえて教室中を見渡した。物音はトイレからだった。
コトブキは注意深く一歩また一歩と踏みしめた。息さえほとんど止めていた。床はカーペットが敷かれていたから足音は出ない。それでも爆発しそうな心臓の鼓動が教室に聞こえてしまいそうで胸元からいやな汗が噴き出てきた。
ドアに耳をそばだてた。中から衣擦れのような音がした。コトブキはヒタチノゾミがスカートをまくし上げているところを想像したが、一人ではないような気がして動揺した。
男の声がした。
コトブキは完全に息を止めた。宙空を睨み据え、さらに耳をそばだてた。間違いなく気配は二つある。
『先生』がどんな車に乗っていたのか知らないことにコトブキはこのとき初めて気がついた。そこに停まっていた車は灰色のトヨタのハイエースバンだった。
玄関で靴を脱いだとき建物全体が外と較べて薄暗いことにコトブキは気がついた。コトブキは、おつかれさまです、と声に出さずに言った。教室は誰もいなかった。薄暗いのはブラインドウを全部下ろしているせいだとわかった。
ヒタチノゾミの私物は机にひろげられたまま残っていた。パソコンもつけっぱなしだ。コトブキはヒタチノゾミのスマホを見つけて自分のスマホを探しにきたことを思い出した。スマホはコトブキの使っているキーボードの影にあった。
ヒタチノゾミのパソコンにはタイピング練習サイトが表示されていた。
物音がした。
コトブキは思わずスマホを机に落とした。机のうえで振動するスマホを慌てて押さえて教室中を見渡した。物音はトイレからだった。
コトブキは注意深く一歩また一歩と踏みしめた。息さえほとんど止めていた。床はカーペットが敷かれていたから足音は出ない。それでも爆発しそうな心臓の鼓動が教室に聞こえてしまいそうで胸元からいやな汗が噴き出てきた。
ドアに耳をそばだてた。中から衣擦れのような音がした。コトブキはヒタチノゾミがスカートをまくし上げているところを想像したが、一人ではないような気がして動揺した。
男の声がした。
コトブキは完全に息を止めた。宙空を睨み据え、さらに耳をそばだてた。間違いなく気配は二つある。

