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BAR・エロスは今も・・
第2章 修 戸惑いのマッチング
「せっかくBAR・エロスにいらしたんですから、交渉に応じてみたらいかがですか?」
紫苑の勧めに、どうしたらいいのかと尋ねる修に、セックスの交渉前提のつもりで、
と私が付け加えた。
 修は、少し考えるようなそぶりも見せたが、
いきなり立ち上がって女性に向かって頭をさげた。
相手は、こんな大きなアクションが返ってくるとは思わなかったようで、
クスクスと笑い声を漏らした。
「梓さん、俺、交渉っていうのやってみたい。あの人の隣に行けばいいの?
 どうすればいいの?」
急に浮足立つ修に紫苑がソファ席を使うのだと説明する。修はオッケーと声を弾また。
「梓さんが見た世界を俺も見てみたい。いいよね?」
屈託ない笑顔でそう言う修に、私は言葉なく肯いた。

 私の見た世界・・
このBAR・エロスの扉を開けた者は、誰でも見る権利がある世界。
見ず知らずの相手にひと時の自分を預ける。
そうまでして快感を得たい男女の集う場所がこのBAR・エロスなのだから。

 ソファ席の暗がりの中にぽつんと一つ、キャンドルが灯る。
紫苑によって閉ざされた空間で、あの男と女はどんなネゴシエイトをするのだろう・・・
「ママ、お客様がいらっしゃいましたよ」
バーテンの平坦な声に我に返る。重い扉の向こうから、新たな客が入ってきた。
私は胸に手を当て自分の役目を心の中で唱えてから、客を迎えに出た。

「いらっしゃいませ、エロスへようこそ」




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