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blossom
第23章 Love22 : 桂木さくらという女
子供たちが大きな山をのぼりソリで滑ってくるのを、夫と並んでベンチに座って眺めている。

(今なら聞ける?)
意を決して息を吸い込んだとき、夫の方から切り出してきた。

「さっきの事なんだけど」

ゴクリと唾を飲み込む。

「別にさくらが心配するようなことはないからね。俺たちが前に話し合ったことを共有しただけだよ。あと、連絡先の交換はした。」

「共有?」

「さくらの中で、冴島はただの火遊びじゃないことは分かってる。あの子たちのおかげでさくらの夫でいれてるだけ。」
卑屈になっている訳ではなく、夫は分析しているような口調で冷静だった。

「そんなことっ」

「いいんだよ、気にしないで。俺はそれでもさくらと一緒にいられれば幸せだから。」

夫の手が私の手を握った。
「愛してるんだよ。心から。」



「見ててー!」
陸人と愛花が二人一緒にソリに乗って降りてくるようだ。
「キャー」
楽しそうな歓声。

無事下まで滑り降りた二人は金網越しの私たちに近づいてきた。
「めっちゃ速くて面白かったー」

「もう一回やろ?」

「今度は私が前ね」
二人はまた仲良く坂を上って行った。



「冴島もさくらのこと本気だって。本気で…」
少し辛そうな顔をしていた。

「パパ…」

ふぅっと軽く息を吐いた夫は、再び落ち着いた口調で言った。
「だからね、二人でさくらを愛していく協定を結んだんだ。ただそれだけのことだよ。アイツも俺と同じ種類の人間なんだよ、多分ね。」

念押しするように、更に夫は続けた。

「さくらはどちらかを選ぶ必要がないってことだよ。どちらも捨てずに済むんだ。」

夫の言葉に素直に反応したのは、心だけでなく身体もだった。身体の中心が疼いたような気がしたのだ。
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