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転生悪役令嬢は甘く、乱される。
第6章 王子との邂逅


「――姉さん! 殿下への挨拶はもう済んだでしょう?」


いつまで経っても戻ってこない私に痺れを切らしたのか。

相変わらず不機嫌を張り付けた面差しで、殿下の掴んでいる腕とは反対の私の右手を掴んで、ラドルフが急かしてくる。


「ら、ラドルフ…っ」

「殿下、舞踏会も始まります。そろそろ姉を解放して頂きたいのですが?」


相手はこの国の王子様だというのに、ラドルフは挑発的とも取れる態度で殿下に迫る。


「これはこれは。分かったよ、弟君をこれ以上待たせるのも申し訳ないしね」

「殿下…! 私の弟が失礼を――」

「気にしてないから、大丈夫。それより……」


弟の失礼な態度に、慌てて謝ろうとした私の耳元へレイモンド殿下が囁く。


「……また、君に会いたい、リディアン。君が嫌じゃなければ、今夜の8時に。舞踏会場の左、一番奥にあるテラスで、君を待ってる」

「……っ」


パッと殿下が離れ、どことなく熱を帯びた視線で見つめられる。


「ほら、姉さん! 行くよ!」

「え、ええ……」


ラドルフに手を引かれながら、胸の鼓動が忙しなくなってくる。

――君を待ってる。

レイモンド殿下からの囁きだけが、頭の中を支配していた。

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