この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
転生悪役令嬢は甘く、乱される。
第6章 王子との邂逅
「――姉さん! 殿下への挨拶はもう済んだでしょう?」
いつまで経っても戻ってこない私に痺れを切らしたのか。
相変わらず不機嫌を張り付けた面差しで、殿下の掴んでいる腕とは反対の私の右手を掴んで、ラドルフが急かしてくる。
「ら、ラドルフ…っ」
「殿下、舞踏会も始まります。そろそろ姉を解放して頂きたいのですが?」
相手はこの国の王子様だというのに、ラドルフは挑発的とも取れる態度で殿下に迫る。
「これはこれは。分かったよ、弟君をこれ以上待たせるのも申し訳ないしね」
「殿下…! 私の弟が失礼を――」
「気にしてないから、大丈夫。それより……」
弟の失礼な態度に、慌てて謝ろうとした私の耳元へレイモンド殿下が囁く。
「……また、君に会いたい、リディアン。君が嫌じゃなければ、今夜の8時に。舞踏会場の左、一番奥にあるテラスで、君を待ってる」
「……っ」
パッと殿下が離れ、どことなく熱を帯びた視線で見つめられる。
「ほら、姉さん! 行くよ!」
「え、ええ……」
ラドルフに手を引かれながら、胸の鼓動が忙しなくなってくる。
――君を待ってる。
レイモンド殿下からの囁きだけが、頭の中を支配していた。