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転生悪役令嬢は甘く、乱される。
第8章 酔いに酔わされ、濡れる夜
ガラス戸を引いて、賑やかな喧騒から逃れるようにテラスへと顔を出す。
(わ……冷たい)
季節は秋から冬へと移ろう、闇が深まる宵とあって、前からひんやりとした空気が吹き込み、肌を撫でていく。
普段の私ならば、寒がるほどの冷たさ。
けれど、酔いに火照る体にはその冷たさが妙に心地よく。
酔いにふらつく足取りで、テラスの端にあるフェンスまでなんとか歩いていった。
「はああ……気持ちいい」
フェンスに腕を乗せて寄りかかり、ほうっと人心地つく。
凄い……静かね……。
ガラス戸を隔てた向こう側は、きらびやかな賑わいで溢れかえっているのに。
ガラス戸一枚を挟んだだけで、こちら側はまるで別世界だとでも言うように静寂に満ちていた。
「……月も綺麗」
「確かに。今日は三日月だけど、それもまた風情があるよね」
「……?」
てっきり誰も居ないと思っていたのに。
私の独り言に返答が返ってきて、小首を傾げる。
「だれ?」
「誰とは少し傷付くな。もう僕の事は忘れちゃった?」