この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
転生悪役令嬢は甘く、乱される。
第1章 社畜街道と、乙女ゲー
少し欠けたふっくらとした月に照らされ、うっすらと光り輝く銀色の毛並み。
その猫が不意に足を止め、こちらを振り返る。
ゆらりと揺れる尻尾は三ツ又に分かれていて…………
んん??
「……見間違い?」
普通の猫は尻尾は一本が当たり前だよね。
仕事で疲れた頭のせいか、思考が上手く回らない。
その猫と目が合う。
怪しく光り輝く、血のようなルビー色の瞳。
吸い込まれるように見つめていたら、凄い勢いで猫の背後に迫る“何か”に気付いた。
「危ない……っ!」
「!!」
咄嗟に走り出しながら、叫ぶ。
その声に気付いた猫が驚いたように瞳を瞬かせたのは一瞬だったはずなのに。
その時の私にはやけにゆっくりと感じた。
何故って……?
――それは、
次の瞬間。
私は猫を抱き抱えて、トラックの眼前に飛び出していたから。