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わたしを見ないで
第4章 指名返し
 20時過ぎのホテル街は土曜日の晩ということもあり、盛んに人が行き交っている。
 店に指定されたホテルに入ると、10分ほどの清掃待ちを言い渡された。
 フロント奥にあるパーテーションで一組ずつ仕切られた待合室に腰掛けると、先生はスマホをポケットから取り出していじりながら「仕事は忙しい?」と訊いてきた。ガムはまだ根気よく噛み続けいる。


「うん。忙しい」

「へえ。次に来たときはヒマだって嘆いてないといいけど」

「ねえ“お兄さん”、もしかしてわたしのこと気に入ってくれたの?」


 わざとらしく嬉しそうな笑顔を作ったら、先生も思いっきり作り笑顔でわたしに言った。


「気に入らない女に金と時間つかうバカなんかいないよ」


 そう言ったきり先生は部屋に案内されるまで一言も口を利かなかった。



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