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地味子が官能小説を書いたら
第3章 片思い

---------- 【序】秘密のバイト⑥ ----------
「やあ~、来てくれて、ありがとう、えーと、紗栄子ちゃんだったかな」
立花は部屋に入ってくるなり愛想を振りまいた。今日の目的も告げず呼び出して置いて、いい気なものだと怒りがこみ上げてくるが、それよりも不安の方が大きい。紗栄子は、怒りを抑えつつ、先ずは挨拶を済ませる。
「こんにちは、立花さん」
「あの、わたし、今日は面接だけだと伺っていたんですけど」
「うん、うん、わかってるよ、モモちゃんが余計な事を言ったのかな」
「確かに撮影の予約は入れてるけどね、紗栄子ちゃんが絶対に出なきゃいけないものではないから」
「何せ、仕事は次から次へと舞い込んでくるものだから、とにかく忙しくてね」
「面接が終わって直ぐに出演したいなんて子のために、同時に撮影のスケジュールを組んじゃうんだよ」
「もちろん、紗栄子ちゃんが嫌なら、今日はこのまま帰って貰っても結構だから、気にしないでよ、代役も用意しているし」
(代役って、杏果さんのことか……)彼女に出演させるのは気が引けたが、紗栄子も出演したくない。
「はい、わたし、アダルトビデオなんて無理ですから、すみません」
「うん、うん、良いよ良いよ、そう言う子も多いからね」
「とりあえず、これ、交通費ね」
そう言って立花は封筒を渡した。
紗栄子は受け取り、中を確認する。中には、樋口一葉ではなく福沢諭吉がいた。
「あれ?立花さん、1万円札が入ってます」
「あ、良いの良いの、怖がらせちゃったみたいだから、お詫びも込めて、取っておいて」
(やたー、ラッキー)という感情は表に出さず、紗栄子は丁寧に礼を言った。
「すみません、気を使っていただいて、ありがとうございます」
うんうん、と首を縦に振っている立花だが、イヤラシイ視線を感じる。
頭のてっぺんからつま先まで、ねっとりとした視線に、紗栄子は身震いした。
「いや~、相変わらず可愛い」
「それにしても、今日は落ち着いた格好しているね、この間会った時は、渋谷ギャルと言った印象だけどね」
(渋谷ギャルだなんて、いつの時代の表現だよ、古!)紗栄子は苦笑いする。
「いや、大したものだ、それだけ変化付けられれば、女優としてやっていけるのにな~」
「いや、もったいない」

