この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
† 姫と剣 †
第5章 来賓
宮殿前、ローハーグの用意した馬車の前、リューイは自身の馬を手で引きながらルシアを待つ。
「さすがローハーグ…馬車の作りもアノアとは違うな」
どこからともなく現れたロイを、リューイは横目で見つめる。
その様子を見てロイはハハと笑った。
「本当に、君は俺のことが気に入らないみたいだね」
「当たり前だ」
冷たく言い放ったリューイにロイは近付く。
「君の気持ちは報われることはない。わかっているだろう?」
「……言っている意味がわからんな」
「君は騎士で、姫は……『姫』だ」
「………」
「一生とぼけるつもりなら、それで構わないけどな」
リューイは軽く目を見開くと、ロイに向き直る。
二人は、きつく睨み合うようにして顔を合わせた。
「俺は、必ず姫を妃にする。それでもお前は、耐えられるのか?」
「………勘違いするな。俺の仕事は姫を守ること。姫が誰とご結婚されようがそれは変わらない」
「そう…か。本当君はやっかいだよ」
ふんと息を吐いたロイは、長い黒髪をかき上げて、リューイから視線を外す。
遠くから、支度を終えたルシアがこちらへ向かって歩いているのが見えて、その様子を眺める。
「やりづらいったらありゃしない」
「何が言いたい」
「君みたいな、はっきりしない相手がライバルだとやりづらい、と言っているんだ」
「……」
「明らかに敵でも、その敵が戦場に現れない限りは戦えない…だろう。君はそれ、だよ」
そう言いながら、ルシアに向けて笑顔を見せているロイの横顔をリューイはしばらく見ていた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


