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† 姫と剣 †
第1章 お忍び
「素敵な日ね。私もお母様のお墓へお花をたむけないと」
「そうですね…。ルシア様のお母様ってとってもお美しい方だったとか」
「そうみたいね…」
他人事のように言ったルシアに、マヤは首を捻る。
「あまり…覚えていらっしゃらないのですか?」
「うん、全く……」
王妃が亡くなったのは、マヤの記憶では、10数年前。
確か不慮の事故によるものだと聞いたことがある。
マヤは7.8歳の子どもだったが、その知らせで街中の人々が悲しんでいたのは覚えている。
マヤとルシアは同い年なので、普通だったらルシアが覚えていないということはないはず…
だが、悲しい出来事はショックで忘れてしまうこともある、というし……
マヤがあれこれと思いを巡らせている間、ルシアは、街の奥で見たことのある人物の影に目を凝らしていた。
「あの人…っ…」
肩に棍棒のような武器を携えて、茂みの方へと向かっていく大男。
「ん……? ルシア様どうかいたしました?」
「あの奥にいる人…街に初めてきた日に暴れてた……」
「え? あーほんとだ、何でしたっけ、グレン…?とか言われていましたっけ? ルシア様が突然立ち向かって行ってしまった時は本当に心臓が飛び出そうで……」
その男はマヤが言う通り、紛れもなくグレンだった。
リューイから、街を出ろと言われたはずなのに、街を彷徨いているのをルシアはじっと見つめる。
「嫌な予感がする」
「へ……?」
案の定、遠目からでも分かるほどの殺気を漂わせて、グレンは茂みの中へ入っていく。
その様子にルシアはハッと息を飲んだ。

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