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† 姫と剣 †
第9章 記憶
「リューイ………」
何か言いたげに、ルシアはリューイの名を呼ぶが、そのあと軽く笑いながら顔を左右に振った。
「ごめんなさい、なんでもないの」
「………………」
「今日は休むわ。話してくれて……ありがとう」
正直、まだリューイの話を飲み込めていなかった。
何かの物語を聞かされたかのような感覚で、まだ自分事に思えていない。
でも………
「覚えていないけど……あなたのせいじゃない」
扉まで足を進めたリューイは振り返ってルシアをじっと見つめる。
「事故だったのよ。だから、自分を責めないで」
「姫………」
頭を下げて、グッと奥歯を噛んだリューイは、そのまま「失礼します」と言って部屋を出た。
部屋を出て、扉を閉めたところで、扉の隣の壁に寄りかかって腕を組むロイの姿が目に入った。
ロイも顔を上げてリューイのことを見つめる。
そして片眉を上げると、はぁ…と深くため息をついた。
「ここは……中の声がよく聞こえるな」
「…………………」
「昨夜……よく耐えたな」
ロイの言葉に返事をせず、リューイは扉の向かいの壁に寄りかかった。
しばらく、2人の間に沈黙が流れる。
互いに何か言いたげで、それでいて、何も言わない。
痺れを切らしたのは、ロイの方だった。
「………魔女だなんだと言っていたが…」
「盗み聞きとは趣味が良いな」
「フィアンセが男と2人部屋の中にいたら、気になるのが普通だろう」

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