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ハニードロップ
第5章 人生のゴール
「まさかまさかだったわ」

 次の日、望月さんがまた給湯室で私に話しかけてきた。そうだった、昨日望月さんにバレたんだった。あの後ホテルでまたまた甘い時間を過ごしたせいですっかり忘れていた。

「あ、あの、どうかこのことは内密に……」
「分かってるって。俺、そんな最低な奴じゃない」

 望月さんは苦笑して、自分のカップを取り出した。不意に、私の首筋に目を止める。

「意外」
「えっ?」
「あんだけ牽制しといてキスマークとかつけねーんだな」
「牽制?」

 訳が分からなくて首を傾げると、望月さんは「こっちの話」と楽しそうに笑った。

「お前が最近綺麗になった理由も分かったし、これでようやく諦めつくわ」
「そんな、諦めだなんて」
「いや、ほんとに。お前に振られた時のこと、未だに夢に見て魘されてたから」

 信じられなかった。そんなに執着がないように見えていたのだ。私も自分ばかりで、彼のことをちゃんと見られていなかったことに気付く。

「んー、あの話は言わない方がいいかな」
「あの話?」

 望月さんは顎に手を置いて考え込んでいるようだった。そして私をじっと見据える。

「んー、いいや」
「えっ、何ですか?」
「色々大変だと思うけど、頑張れよ」

 結局望月さんはそう言って、給湯室を出て行った。スッキリしたような、ちょっとだけ切ないような、複雑な気持ちになった。いやそれよりも、あの話って何だよ。
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