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不倫研究サークル
第14章 愛莉
「圭って言うのか、まあ、飲みなよ」とビールの缶を僕に差し出す。

「圭はお酒が弱いのよ」

そう言うと、愛莉はビールの缶を取り上げ、冷蔵庫に戻した。

「愛莉が飲めば良いじゃない、どうしたの?」

愛莉の母は、ビールのプルタブを開けると、グビグビと喉を鳴らした。

「今日は飲みたくない」ブスッとした表情で愛莉は言った。

「あ……の、まだ自己紹介が済んでないので……
僕、森岡圭と言います。 愛莉さんと同じ大学二年生で、長谷田大学に通ってます」

恋人の家族に自己紹介するなんて、もちろん、僕にとっては初めての経験だ。緊張で心臓が爆発しそうになった。

「あ、愛莉さんと、お、お、お付き合いさせていた、いただいております」

僕が挨拶すると、愛莉の母は『ブーーー』と噴き出した。

「圭、そんなにかしこまらなくて良いよ、もっと楽にして」

「う、うん」

何か変だったのだろうかと、僕は少し意気消沈してしまう。

「あはは、ゴメンね。 そんなかしこまって挨拶されたのなんて久しくないからさ、笑ってゴメン」

愛莉と同じで、目がきつい分、笑うと可愛い。

「ワタシは愛莉の母で、愛美《あいみ》。 よろしくね、圭」

愛美は、愛莉と違って気さくな感じだった。さすが客仕事をしているだけはあると感心する。

「で、愛莉。 いつも外泊してるのに、なんで今日は家に帰ってきたの?」

「別に良いじゃない、わたしの家でもあるんだし」

「カレシを紹介しに帰った、訳じゃないでしょ」

「あ、お母さん。 愛莉さんは今日、具合悪くなって」

「お母さんだなんて、堅苦しい、愛美で良いよ」

「別に病気になったわけじゃないよ」

そう言うと愛莉は、ドラッグストアで買った紙袋をテーブルの上で開けた。
中には板チョコレートでも入ってそうな薄い箱が入っていた。


「愛莉、アンタ、まさか……」

「愛莉、それって何なの?」

僕と、愛美が視線を愛莉へ向ける。


「生理が来ないの……」

「へっ?」

愛莉は、口角を歪めるような笑いを見せたかと思うと、ポツリと言った。

「わたし、多分、妊娠してる」

「愛莉、アンタ……」


愛莉が、妊娠……。

何が起きているのか、これからどうなるのか……、

頭がグラグラとし、めまいがした。




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