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夏の終わりに
第3章 再会
その日、毎年一緒に観に行っている花火大会に、千里は蝶の絵柄が入ったシンプルで清楚な浴衣を着てきた。
結い上げた髪が白い項を晒し、重ねられた襟元からは芳しい色香が漂ってくるようだった。

いつものように腕に手を絡める仕草は、けれど優しく、恥じらいと愛情が籠められているようにさえ思えた。

ずっと可愛がり慈しんできた“ちぃ”は、そこにはいなかった。いるのは、あどけない姿の中に色香を漂わせ始めた一人の女性だった。


二人は人混みを避けて、神社の拝殿へと続く長い階段を登った。
いつものように参拝して……そこで止まるべきだったと浩人は今でも後悔している。

毎年そうしているように森へ入って行くのではなかった。
例えそこが誰にも知られていない絶好の穴場でも、二人きりになるのではなかった。


そうすれば、あんなことは起こらなかったのに、と。
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