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夏の終わりに
第18章 安息 ①
ザッと近くで足音がして、浩人は警戒心剥き出しに振り返った。
テッペー達が戻ってきたと思ったのだ。

しかしそこにあったのは、カズの大きな影だった。

「警察…呼ぶか?」

ほっと肩の力を抜いた浩人に、カズは躊躇いがちに尋ねてくる。
浩人はぎくりとして、千里を抱える腕に一層力をこめた。触れている肌に指が食い込んで、また千里が呻く。

「…ヒ…ロにぃ……、くる…し……」

「あ、ごめ……ん」

浩人はなんとか力を緩めたが、千里を激しく抱きしめる、その衝動を抑えることが出来ないでいた。

腕の中に閉じこめておかなければ、千里を守れない。
しっかりと抱きしめておかなければ、腕の間からすり抜けて逃げていってしまう。

そうしたら今度こそ、千里を失ってしまう。

「ヒロ?」

「…あ、うん。警察は呼ばない」

浩人は気持ちを落ち着かせようと、千里の髪についた土を払い落すように何度も何度も撫でた。
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