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夏の終わりに
第18章 安息 ①
その背中に、しっとりと濡れた柔らかな体が重なった。

「行かないで…っ」

手が腹部へ回される。

浩人は体を強張らせ、振り返ることも、抱きしめ返すことも出来ずに佇んだ。
背中に押し当てられる胸の感触や、包み込まれているような何とも言えない快感に眩暈が起こり、心の中に湧き起こる強い欲求にジーンズの前が張り詰めていく。

「ちぃ……」

絞り出した声に、千里がビクリと震える。それでも、浩人にしがみつく手が緩むことはなかった。

「もう、嫌なの。こんなの、嫌っ」

泣き声が震動となって、浩人の体に浸透していく。
恐る恐る振り返ると、真っ直ぐに見つめてくる濡れた瞳とぶつかった。

「どうなっても、知らないぞ」

「いいよ」

低く唸る声に、千里がか細く鳴いて応える。

「ヒロ兄ちゃんになら、何をされても……いい」

浩人は再び唸り声をあげた。
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