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夏の終わりに
第22章 繋がる想い ②
浩人が離れていく。

湧きあがる恐怖に震え、千里は懸命にすがりついていた。
気遣うようにそっと抱きしめられても、涙は止まることなく流れていく。

「…ごめん」
「ち、違うの」

言いながら、何度も目尻を拭う。

嫌だから泣いているのではない。
浩人が謝る理由なんて、ひとつもない。

浩人の微笑みが昔みたいに優しかったから嬉しいのだと、そう伝えたいのに嗚咽が止まらなかった。

「ちぃ、」

語尾をほんの少し上げて浩人が囁く。
懐かしいその呼び方に、千里はとうとう両手で顔を隠してしまった。


―――何もなかったことには出来ないよ

今朝、浩人に言われた言葉を思い出して、激しくしゃくりあげる。

―――やり直せない

そう拒否されたのに、四年前に失ってしまったはずの呼び方と笑顔にもう一度会えた。

もう二度と会えないと思っていた浩人に、会えた。
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