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夏の終わりに
第25章 エピローグ
素敵だ。確かに、素敵だ。
と言うか、もう最高にハッピーだ。
しかし…、

康人がなおも声を荒げようとした時、千穂が感慨深そうに溜め息をついた。

「二人の想いが成熟するまで、二十年か。長かったわね」

「そうね…」

美也子も懐かしそうに目を細め、リビングの壁にかけてある小さな写真を見やった。

少し色褪せた写真の中に、若かりし頃の康人と美也子、それから大きな布の塊を大事そうに抱いている六歳の浩人がいる。
浩人は、布を見下ろして嬉しそうに笑っていた。

「もうそんなに経ったのね」

……浩人が家族になってから。

美也子はその言葉を飲み込んで、口許を綻ばせた。

「早いな…」

同じように写真を見つめて、康人が頷く。

しかし、康人が見ているのは写真そのものではなかった。
美也子も千穂も、その写真を撮った少し前の出来事を思い出していた。
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