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夏の終わりに
第11章 花火
境内は花火を待つ人で賑わっていた。

鎮守の森が空を狭く隠すため、花火が見えるポイントも狭い。どこが良く見えるのか知っている地元の人達は、空が拓けている石階段の上に集まり、あるいは拝殿の庇(ヒサシ)に子供を立たせて自分達もその傍を陣取っている。


薄暗くなり始めてから神社へやって来た浩人と千里は、完全に出遅れしまい、賽銭箱の傍に集まる人混みを掻き分けて参拝を済ませると途方に暮れた。
このまま留まっていても花火は見えるけれど、無理に割って入った今の状態では周りに迷惑をかけるだけ。

「あっちに戻ろうか」

「えっ、うん」

浩人に促されて千里は慌てて頷いた。

再び人を掻き分けて拝殿を離れ、参道を戻っていく。石階段の近くに集まる人達の隅で足を止めると、二人は同時に空を見上げた。

深みを増始めた空に、第一弾が打ち上がった。
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