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想い想われ歪なカタチ
第1章 1
北からの 風の吹き荒れる頭上の その遥か彼方、
床の汚れをふき取った雑巾のような灰色の雲の、
厚く張られた空から降る雪は、何故 こんなに真っ白なのだろう。

あの雲の浮かぶ上空の温度は、摂氏零度を余裕で下回る。
そんな中、薄汚れた水蒸気の群れは、気まぐれに凝結した氷晶の塊を落とす。
長い長い空中の落下を経て、氷晶の塊は地上に届く。

だから、何時も見る液体の雨は、空の落とした雫の偽りの姿で、雪こそがその真実の姿に近い。

地上に降り立った雪粒は、公園の平らな地面をさらりと滑って、
かさかさと鳴る落ち葉と一緒に舞い踊る。


誰も居ない公園の真中に立ち竦んで灰色の空を見あげる。
降りかかる雪が素肌に触るとヒヤリとして体温を奪う。
立ちっぱなしの足が、自分のものではないように凍り付いていたけれど
遊具に向かい合って並ぶベンチには腰掛けなかった。
そこに座ると、もう二度と立てなくなる気がしたから。

広場の真中にぽつんとそびえる、背の高い街灯の下に寄り添って立った。
寄りかかろうにも、翡翠色のペンキが剥げかかった円柱の金属は、
衣服から染み込んで容赦なく体温を奪うので、
自分も街灯になったように直立しているしかなかった。
とっくに手足の指先は痺れ始めている。

待ちつづけて何時間経つのだろう。
太陽は雲に閉ざされてその位置さえ分からないから、暗く翳りが差す光加減だけが頼りだ。
もう辺りは、冷気を含む暗闇が、ひ弱な光を地平線の方へと追い立て始めている。

頭上の街灯がパチンと微かに音を立てて点いた。
照らし出された雪が嬉しそうに踊り、やけに青白い。

かさかさにひび割れた唇から、短く息を吐き出すと、空中で白く濁って風に吹かれて消えた。

寒い・・・ なんて、 もう  感じない。

ずっと こうしていると、
何故、自分がこの場所に居るのか、
理由までもが凍り付いて曖昧に罅割れる。
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