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想い想われ歪なカタチ
第2章 2
「蒸らしはきっかり三分よ! 一秒でも過ぎたらただじゃおかないから!!
 ポットとカップはちゃんと予め温めたんでしょうね?」


「も、もちろんですわ、お嬢様」


私のお気に入りのカップは、屋敷の装飾用食器棚に並ぶ数ある中でもマイセンの、
煌びやかな薔薇の花柄の一番綺麗なヤツと決まってる。
これを使うとパパはあまり良い顔をしないけど、知らないふりをする。
葉は『ウィリアムソン&マゴー』の『ピュア・アッサム』
アッサムならこれじゃないと絶対嫌。

シルバーのケーキスタンドはちゃんと三段にして、自家製のケーキとスコーンと果物に飾り花、
色彩豊かにふんだんに盛り付けられてないと。
残すなんて、当たり前じゃないの。目で食べるものなんだから。

そうやって、私の好みを、
新たに来たメイドにいちいち教えなきゃならないと知った時には、
桁にゼロの4、5個は平気で並ぶ値段のカップを、そのマヌケな顔めがけて、
投げつけてやろうかと本気で思った。

なんでこんな新米のメイドが私の身の回りの世話をするのかしら。
だいたい流牙は何処に行ったの? 

そう 流牙!!! 

私のこの、至上最悪の不機嫌は、
生活全てが順調に滑るために不可欠な、
流牙というこれ以上なく便利な要素の突然の欠落が招いてる。

流牙(りゅうが)は、この隠岐家の屋敷の使用人。
性別:♂ 年齢:23歳。
容貌、ルックスは、まぁ申し分無し。
無口、無表情、絶対服従の私の下僕。
この私が選んで、この私が買ったんだから、当然よね。

流牙は優秀な使用人で、雑務も重務も的確にこなす、私の一番のお気に入り。
そのことを面と向かって言ってやったことはないけど。
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