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想い想われ歪なカタチ
第6章 6
 伊吹が忽然と姿を消した。


俺が社で仕事を終えて帰ってきたとき、あいつの姿はもう何処にもなかった。
屋敷に敷かれた万全の警備の管理体制の ほんの小さな隙をつく
それは伊吹の仕業とはとても思えない、鮮やかな手口だった。

伊吹が伊吹自身の意志で出て行ったのは確かだ。
伊吹とよく似た体型をしたメイドの、私服とコートと、ついでに金銭を拝借して、
俺が与えたメイド服を、丁寧に脱ぎ散らかして出て行った形跡がある。

伊吹にそんなに行動力があるとは思わなかった。
立場が逆転したあの日、俺は確かに、屋敷を出て行けと嗾(けしか)けはした。
でも、それは
 実験室のラット顔負けの無菌状態で育てられたような伊吹が、
 この屋敷から飛び出して 生きていけるはずがない。
 それは本人もよく自覚している。
だから言えた言葉だ。

思えば昔から伊吹は、ときどき予想のつかない行動に走ることがあった。
今回のことも そのうちの一つだろう。
所詮は籠の中の小鳥。
伊吹のことなら俺はすべて知りつくしている。
羽ばたいた方角も 行き先もすべて、俺の手の内の中―――  


の、筈だった。


探そうとしてよくよく考えれば、あいつがほぼ無一文で転がり込める所なんて何処にも無い。
家を訪ねて泊まれるような、友人など伊吹に居た覚えは無い。
辛うじて俺が知っているのは、
金が有る時はやたらその存在を主張しても、
金が無い時には影も形もなくなる親類縁者ばかりだ。
探りの電話を入れてみたものの、そんな子がいたのかさえよく覚えていない素振りをかましてやがる。

全ての環境が快適に整えられた温室でぬくぬくと育てられたあいつが、
冷たい風の吹き荒れる街中に出て行って、果たして無事でいられるか?
何かしらのトラブルに巻き込まれたって可能性ってヤツが、うんざりするほど高過ぎる。
それともまさか、伊吹に限って馬鹿なことを考えるわけは無いだろーが・・・・とにかく不安だ。
ろくな考えもなしに、一人で出て行きやがって! あいつはまったく、
自分一人じゃ何も出来ねーくせして。
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