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熊猫彼氏。
第4章 熊猫彼氏。

どんなに可愛くても、パンダは獣。
今の俺は着ぐるみといえどパンダ。

本能のままイキたい、なんなら彼女に種付けすべくナカに放ちたいとこだけど。俺は人間。最後の最後で理性が働いてくれた。

「ご、ごめん、樹里ちゃん…」
「…あ…ぅん、大丈夫…」

樹里ちゃんは半ば放心状態で。俺の謝罪の言葉で我に帰ったらしく、いつもの笑顔を見せてくれた。

「ふ、風呂入ろっか!まだ時間あるし…あ!」

樹里ちゃんはもちろん、俺も大分汗をかいてしまった。『仕事』の前に一度身も心もさっぱりしよう。そう考え着ぐるみの頭をはずしたところで、大事なことを思い出し声を上げた。

「?なあに?」
「こ、こんな時に何なんだけどさ…!」

ちょっと待ってて、と言い残しクローゼットを漁る俺を不思議そうに見守る樹里ちゃん。
再び彼女のもとに戻った俺の手には、青地にロゴと白鳥がプリントされた小さな紙袋。これはもちろん…

「誕生日おめでとう、樹里ちゃん」

そう、贈り物だ。爪に火を灯す勢いで貯金して、女の子や先輩に情報収集しまくって、迷いに迷って決めた、彼女の誕生石があしらわれたガラス細工のネックレス。

しかも…パンダ型。他と被らないのを狙っていたんだけど、まさかこんな状況になるとは思わなかった。よくよくパンダに縁があるのかなぁ、俺。

「可愛い…!ありがとう!」

俺に断りをいれて開封し、ネックレスを手に取った樹里ちゃんはめちゃくちゃ喜んでくれた。心からの笑顔を見せてくれた。

「……」

樹里ちゃんは笑うと目がなくなる。
満面の笑顔がめちゃくちゃ可愛い。

性格も陽気でほがらかでさあ。
絶対ネガティブ発言しないの。

俺、この子すごく好きなんだよ。
ああ守んなきゃ。何があっても。

「…大好きだよ…樹里ちゃん…」
「私も!光太郎くん…大好きだよ」

そう告げあった直後、俺達はキスを交わした。
触れあうだけだけど深く繋がり合えるキスを。


──そのまま風呂行っちゃったから、気付かなかったんだ。マナーモードに設定され、充電した状態で、床に(しかも伏せて)置いてあったiPh○neが震えてたのを。
その時ディスプレイに表示されてたのは…

『着信中 村上さん』


風呂上がりに気付き速攻でかけ直した→23頁
俺はもうこの人の言いなりにならない→次頁
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