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はじめてのひと。
第8章 日常
その時ノックの音と共に浴室のドアが開かれた。

千紘くんは顔だけ出してこちらの様子を伺う。

「入っていい?」

「いいよ…」

彼の裸体を見ないように私は手で顔を覆った。

暫くすると、ちゃぷんという音がして胸の上くらいだったお湯が肩が浸かるくらいまで上がってきた。


「手、離していいよ」

小声で話す千紘くんの声が浴室に静かに響く。

私はドキドキしながらゆっくりと顔を上げる。

そこにはすぐ千紘くんの顔があった。
2人で入れば折りたたんだ膝と膝がぶつかってしまうくらいの狭い浴槽なのですぐキス出来そうなほど顔が近い。

その近さに面食らい、顔がどんどん赤くなるのが自分でもわかった。

「顔…赤いよ…」

「千紘くんこそ…」

「こんなこと初めてだからね…」

「そうだよねぇ…」

恥ずかしさと緊張とお湯の熱さで だんだん逆上せそうになってくる。

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