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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第3章 3 太極府
「なるほど。友が二人。一人は王子か」
「隆明さまはどんなお方なのですか?」
「隆王子はとても聡明な方でな。学問もよくお出来になるし。この曹家の長子であるが、生みの母であった王后が亡くなられておる」

 曹隆明は王の嫡男で王太子の身分ではあるが、現在の新しく建てられた王后に次男の博行が生まれたところだった。老師の暗い表情に晶鈴も不安になる。

「隆王子の代で、この曹王朝はますます発展するはずだが……」
「大丈夫ですよ」
「隆王子はお寂しいはずじゃからな、陰ながらお仕えしなさい。表にはあまり出ぬように」
「わかってます」

 幼いながらも晶鈴には自分の立場がよくわかっている。孤独をよく知っている晶鈴は、隆明の孤独もよくわかった。今度誰もいないところで会えたなら、「隆兄さま」と呼ぼうと頭の中で練習した。

「さて、そろそろ石を増やそうかの」

 陳老師は棚から小さな濃紺の包みを取り出す。晶鈴の目の前で、そっと包みを広げていく。中には透明感のある紫の小石が多くある。

「これはなんですか?」

 初めて見る美しい宝玉のような石に晶鈴はうっとりする。

「これは|流雲《ルーン》石というものじゃ、ほらここに文字があるじゃろう」

 老師は印が刻まれたほうを上に向け説明を始める。色々な印があり、それぞれに意味があるようで、偶然を使って占い卜術の道具だった。

「こんなにきれいな石を占いに使うんですか」
「うむ。この石は霊力のある石で、むしろ占いにしか使えない。下手に装飾品などにすると、体調不良を起こしかねん」
「へえ」

 綺麗な石よりも、輝かせる瞳で晶鈴は流雲石を眺める。老師はやはりこの道具を扱えるものは晶鈴しかいないと思っていた。

「晶鈴の住んでいた村よりもはるか西方のかなたから伝わったものだ」
「わたしの村よりも、もっともっと西……」

 故郷の草原に思いを馳せ、さらに心を西に旅させる。手のひらに一つ紫の石を置いてみると、ひんやりとして硬いが、柔らかさも感じた。晶鈴の持つ力をこの石はより増幅させていくのだった。
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