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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第8章 8 太子
 隆明は、美しい萌黄色の着物がしわになるのを気にせず横たわっている。彼にとってリラックスできるの晶鈴の前だけだった。まだ、まとめて結い上げてない漆黒の髪はつややかに床に流れている。何百年と続く王朝は代を重ねるごとに、髪を豊かにし、闇のような黒さをもたらせる。潤った肌はきめ細かく白い。隆明はまるで、この王朝の集大成のような美しさを持っていると噂されている。

「もうここへ気楽には来れませんね」

 珍しく感情的なことを言う晶鈴に、隆明は少しばかり明るい気持ちになる。

「寂しいか?」

 そう尋ねられても晶鈴にはわからなかった。しかし隆明の残念そうな表情を見るのは嫌なので「ええ……」とあいまいに答えた。

「太子となってもまた来る」
「それは……」

 確かに太子となっても、本格的に政治にかかわることは先なので、ある程度は自由の身だ。ただ太子の儀式の後、太子妃選びが待っている。彼が妃を召せば、晶鈴に気軽に会う行為を咎められることもあろう。法によると、太子になってまず正室を娶り、その翌年側室を2人、入内させることになっている。
 晶鈴も隆明もまだ少年少女と大人の狭間で揺れ動き、男女の情念には疎かった。お互いに対する感情にもまだ名称はなかった。
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