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真紅の花嫁
第8章 紫苑の教師


どんな経緯で、かつての教え子の面倒をみるようになったのか――

どう尋ねようかと迷っていたら、後ろでドアの開く音がした。
振り向くと、亮が帰ってきたところだった。


「やあ、矢崎さん。よく来てくれたね」

手にコンビニの袋をぶら下げて、にこにこと入ってくる。
スニーカーを脱いだ素足で、真波がいるのを知っても、驚いた素振りもなかった。

冷蔵庫を開けて、買ってきた飲料ビンを袋ごと入れ、ふとテーブルの上を見た。


「あれ、お茶も出さなかったの?」

じろりと眼鏡の女性をにらむ。

紀美子の態度は一変していた。
それまでの余裕のある感じは消え、そわそわと落ち着きを欠いた挙動となっている。

「ご、ごめんなさい。今、入れますわ」

あわてて席を立つ姿は、まるで暴君の前の召使いのようだ。
真波は取りなすように、

「いえ、わたしがいらないって言ったんです」

「だってさ」

馬鹿にしたふうに言うと、紀美子が座っていた椅子に、悠然と腰を下した。


紀美子はどうしていいかわからず、その場に立ちつくす。
年上の女性、恩師に対する敬意など、微塵もなかった。



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