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真紅の花嫁
第14章 茜色の空


真波は相手の眼をまっすぐに見て、

「望月さん、武藤工業ってご存じですよね」

紀美子は意外そうに瞬きした。
もっと違うことを聞かれると思っていたようだ。

「まあ、知ってけど。
   この辺じゃ有名だからね」

「姫川家は」

「朝比奈の古い家柄でしょう。
  いったい何なの?」

「いきなり申し訳ありません。
  実は桐原君…………

  武藤家と姫川家に恨みがあるようなんですが。
    それについて何かご存じのことありますか?」

「亮が?
  何それ。聞いたことないわね」

「朝山紫郎については?
  桐原君の口から、そういう名前が出たことはないですか?」

「たしか市立美術館で今度、特集をやる画家だっけ?
  亮はアルバイト先のことは何も言ってくれないの」

女教師の顔にあるのは戸惑いだけだった。



とぼけているのだろうか?
しかし、最初からしらばっくれる気なら、この場に来なかったはずだ。


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