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 縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第3章  ファーストキス
「そんな事をさ、どうして考えられるの。リョウってさ、絶対普通の高校生じゃないよね。中学生の時はもっと普通じゃなかたって言ったけど」

「性徴期に応じて経験値が上がったからだな。お前達って性教育ってさ、全然されてねえだろ。俺も親からはされなかったけどさ」

「じゃあリョウにはそういう存在があったんだ」

「だからさ、その先は俺の核心部分なんだよ」

「えー。だって知りたい」

 買い物に行っていた仲間の一人、ナオキが帰ってくるのが見えたので、俺は話題を変えた。

「何買いに行ってたんだ」

「おまえらこそ、なにふたりで盛り上がってるんだ。魔女の攻略か」

「ちげーよ。魂に係わる問題でアドラーの選択肢の話ししてんだよ」

「あれ? 私はサルトルの実存する意味について話してるつもりだったのよ」
 ナオキが音を立てて乱暴に椅子を引き、座る。

「サルトルって古くね。実存ならカミュだと思うんだけど」

「私、ナオキと実存を論ずるつもりはないの」

「なあ、もう一人さ、女子を仲間に入れねえか。割り切れてねえだろ」
 ナオキが5本の指を開き、1本だけを残して閉じる。

「なによ。それってナオキ様御用達ってことだよね」

「賢くてさ、可愛くて、優しくて、エロい女子を捜そうぜ」

「反対だ。割り切れると必然的に相手が固定されてしまう」

「そうよ。言ってくれれば私だってユキだって買い物ぐらい付き合ってあげるんだから。お兄さん。ショートは割安ですよ。今なら1時間をたった数学の課題1科目」

「怖えよ。どこでそんなセリフ覚えて来るんだ。ジョシコーセイがショートとか言ってんじゃねーよ」
「ナオキ。ショートって知ってたんだ」

「あっ!中坊の英語で短いって習ったろが」

 スズが空に向かって笑い声をあげた。

 
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