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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
「前に、フェガリにも差別があるって言ったのを覚えてるかい?」
「えぇ、もちろん」
「フェガリ人は、シャムス人を憎んでいる。昔、フェガリ人はシャムス人に虐げられていたからね。数百年前、フェガリ人はシャムス人の奴隷だったというのもあるから、尚更ね。だからこそ、シャムスとのハーフである僕には、居場所がないんだ。今はフェガリ人として暮らしているけど、シャムスとのハーフだとバレるのが、怖いんだ……」
 笑みを浮かべているものの、ティーカップを持つその手は震えている。カミリアはいてもたってもいられず、彼の隣に座って手を握る。

「ありがとう、カミリア。君は本当に優しいね。そんな君だから、ハーフの僕のことも受け入れてくれるかもしれないって思ったんだ。そしたらいてもたってもいられなくて、無理やり騎士団に入った。そしたら君は団長だって言うじゃないか。カミリアに認めて欲しくて、団長になったんだよ」
 そう言ってラウルは、カミリアに寄りかかる。カミリアはそっとラウルを抱きしめた。焼印があったということは、ラウルは未婚の子だ。それもフェガリとのハーフとなれば、想像を絶する苦労をしてきたのだろう。当時のシャムスなら、ラウルは産まれただけで罪人だ。理不尽な死刑になってもおかしくはない。
 彼がどのような人生を歩んできたのかは知らないが、平坦な道のりでなかったことは確かだ。

「大変だったね、ラウル……。私、全力で任務を遂行するから、ラウルを守るから……。だから……」
「ありがとう、カミリア。少し疲れちゃった……。午後も、僕の話を聞いてくれる?」
 ラウルの声は濡れていた。カミリアは更に強くラウルを抱きしめる。
「えぇ、もちろん。いくらでも聞いてあげるから、今は休んで」
 ラウルをベッドに運ぼうと腕を解くと、その腕を掴まれる。ラウルは潤んだ瞳でカミリアを見上げた。

「おやすみのキス、してくれる? 頬でも額でもいいから。そしたら、きっと安心して眠れると思うんだ」
 カミリアは額にキスを落とした。まだ熱があるのか、彼の額は熱かった。
「おやすみ、ラウル。良い夢を」
「ありがとう、カミリア」
 ラウルはカミリアの手を取ると、手の甲にキスをしてベッドに戻った。カミリアも自室に戻る。
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