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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第6章 6章 光と影
「外は冷えるから、ストールを持ってくるわね。ねぇ、そこのあなた。ソニアを外に連れて行ってあげて。そうね、池の近くがいいわ」
 聞き覚えのある声に顔を上げると、ハーディがこちらに近づき、カミリアを抱き上げた。ただでさえハーディが来たことに驚いているのに、お姫様抱っこをされて困惑する。ここまでしなくてもいいのにと思ったが、カミリア自身も、体調を崩した令嬢をお姫様抱っこしたことがあるので、人のことを言えない。

「すいません……」
「いえ、仕事ですから」
 流石にバレるんじゃないかとヒヤヒヤしながら、ハーディに身を預ける。懐かしい親友の匂いに、気持ちが落ち着いていく。

 ハーディに抱き上げられたまま、外に出る。ひんやりとした風が気持ちいい。池に近づくと、ベンチが見えた。
「あの、ここで大丈夫です。ありがとうございました」
「どういたしまして、カミリア様」
「え?」
 本名を呼ばれてハーディを見上げると、彼女は冷たい目でカミリアを見下ろしていた。ハーディは大股で進むと、屋敷のすぐ近くにある穴にカミリアを落とした。

 考える間もなく、カミリアは穴に落ちてしまった。穴の幅は2mほどで、高さは3mといったところか。地面は泥になっていたおかげで大した怪我もせずに済んだ。
「そこで大人しくしてなさい、裏切り者」
 ハーディは吐き捨てるように言うと、穴の縁より少し下にあるフックにランタンをひっかけ、その場を去っていった。

「待ってよハーディ! 裏切り者ってどういうこと!? 私があなたに何をしたっていうのよ!?」
 叫んでも、ハーディは戻ってこない。途方に暮れていると、足元がひんやりする。徐々に増えていく水が、ランタンに照らされている。
「何これ、どういうこと!?」
 親友の裏切りに、押し寄せてくる水。カミリアはパニックになった。どうして自分が裏切り者呼ばわりされ、こんな穴の中にいるのか、この穴が何のためにあるのか、理解できない。
 ひとつだけ分かっているのは、このままでは溺れ死ぬということだけ。
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