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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第2章 騎士団長命令
「美味しい……!」
「気に入っていただけたようでよかった。美味しいお茶とお菓子があるから楽しい話をしたいところだけど、昨日約束したとおり、シャムスについて教えてくれるかな? 特に、どういったものがどう差別されているのかを」
 真剣な顔で言うラウルに、胃がキュッと締まる感覚がする。シャムスの差別にはカミリア自身も苦しんできた。今までのラウルの行動を見てきて、彼は差別をすることはないだろうと思う反面、万が一のことがあったらという不安も少しある。

「まず髪色ですが、黒髪と赤髪が差別の対象になっています。ブロンドが至高とされており、ブロンドの人間が、黒髪や赤髪の人間を虐げるのは日常茶飯事です」
「確か、黒髪は夜空、赤髪は夕空を連想させるから、だっけ?」
 ラウルの問いに、カミリアは大きく頷く。髪色差別で思い出すのは、子供時代のハーディと、この前街で見かけた黒髪の少年。彼らには罪はないのに、髪色だけで虐げられるのはおかしいと、話をして改めて思った。

「自警団にいた頃、被害者は黒髪や赤髪がほとんどで、加害者は決まってブロンドの人間でした。稀に髪色差別をされている者が加害者になることがありますが、彼らは……」
 加害者にならざるを得なかった彼らを思い出し、胸が苦しくなる。彼らはただ、普通に暮らしていただけなのだ。それなのに髪色を理由に暴力を振るわれ、愛する者を目の前で殺されたり犯されたりされる。その結果、相手を殺害してしまうという痛ましい事件をいくつも見てきた。

「なるほどね、髪色差別だけでも考えられないくらいに酷い……。大丈夫? 気分悪くしたりしてない?」
 顔を上げると、ラウルが気遣わしげにのぞき込んできている。このままではダメだと心の中で自分に言い聞かせ、ラウルを見つめ返す。
「大丈夫です、続けましょう。このことは、できるだけ多くの人に知ってもらいたいんです」
「カミリア……。君は本当に強くて優しい人だね。ありがとう、続けて」
 カミリアは小さく頷くと、紅茶で口を湿らせた。
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