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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第2章 騎士団長命令
「ラウル団長、私からも質問をしていいですか?」
「どうそ」
 カミリアを撫で終わると、ラウルは優雅な仕草で紅茶に口をつける。カミリアはその様子を観察するが。剣を握った時の彼とは別人に見える。
「どうしてそんなに強いんですか?」
 ラウルの動きが止まり、一瞬だけ顔が強張る。だが、すぐにいつもの優しい笑みを浮かべた。

「君には負けるよ」
「私に余裕で勝っておいて、よくそんな嫌味が言えますね」
「嫌味なんかじゃないさ。本気で言ってるんだ」
 カップを置いて言うラウルの顔は真剣そのもので、カミリアは思わず息を呑む。

「僕は、君のような戦い方ができない」
「それってどういう意味ですか?」
 ラウルは質問に答えず、寂しそうに目を伏せた。どう言葉を続けるか考えていると、ラウルは顔を上げて不自然なほど明るい顔をする。

「さてね。それよりもう昼近くだ。授業の準備をしよう」
 貼り付けられた笑みが痛々しく見え、カミリアはそれ以上踏み入ることができなかった。

 午後、ついに人生初めての授業が始まる。カミリアが会議室の前に座ると、騎士達がぞろぞろと集まってくる。席が半分近く埋まったところで、ラウルに授業を始めるように言われた。
(大丈夫、付け焼き刃とはいえ、ちゃんと準備してきたんだから)
 自分に言い聞かせて資料で顔を隠し、小さく息を吐いて騎士達と向かい合う。

「今日から何日か、君達に軍学について教えることになった。こういったことは初めてなので至らぬ点もあると思うが、よろしく頼む」
 硬い表情で挨拶をするカミリアに、ラウルを始め、騎士達は少し微笑ましく思い、彼女を見守る。そうとも知らず、カミリアは手元の資料に目を落とす。

「今日は、人海戦術と少数精鋭についての授業をする。説明するまでもないが、人海戦術は数で押し切る戦術、少数精鋭は名前の通り少人数の精鋭で戦うことを指す。私は人海戦術より、少数精鋭で戦う方がいいと思っている」
 不安になりながら顔を上げると、騎士達は持ってきたノートにカミリアが言ったことを書き込んでいる。真面目に聞いてくれている彼らを見て、少しだけ安心した。
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