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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第2章 騎士団長命令
 その番、カミリアの部屋に来訪者が来る。来訪者は静かにドアをノックする。
「こんばんは、カミリア」
「ハーディ! 今開けるわ」
 ドアを開けると、ハーディがワゴンを押して入室してくる。ワゴンの上には捻挫した日と同じく、ケーキスタンドとふたり分のココアが乗せられている。ハーディは窓際のテーブルに、それらを並べていく。

 ふたりで向かい合って座ると、ハーディが先に口を開く。
「授業続行なんてすごいじゃない、ケリー先生」
「その呼び方恥ずかしいからやめてよ」
 カミリアが頬を僅かに紅潮させると、ハーディはからかうように笑った。

「いいじゃない。カミリアの授業は分かりやすかったから、私でも理解できたわ。ラウル団長に感謝ね」
「ラウル団長ねぇ……」
 ラウルの名前が出た途端、カミリアの表情が曇る。ラウルには感謝しているが、彼といると少し疲れるというのが、今のカミリアの本音だ。

「どうしたの?」
「正直、一緒にいると疲れるのよね……。ドゥム達みたいに差別的な目で見ないのはありがたいけど、発言がいちいちキザだし、過保護っていうか、子供扱いされてる気がするっていうか……」
 この1週間を思い出し、カミリアはため息をつく。ラウルは約束していた午前中はもちろんのこと、授業後や夜までカミリアと一緒にいた。夜に至ってはカミリアの湯浴み後を狙って来て、足に薬を塗る。自分でやると言ってもやらせてもらえず、朝晩欠かさずに薬を塗られ続けた。
 献身的な態度だけでも戸惑うのに、彼は1日5回は口説き文句と捉えてしまう言葉を平然と口にしていた。男性に優しい言葉をかけられることすら慣れていない初心なカミリアにとって、ラウルの口説き文句は心臓に悪い。思い出しただけでため息が出る。

「確かに、ラウル団長は口を開けばカミリアって感じだもんね。好かれてるんじゃない?」
「冗談じゃない!」
 反射的に否定すると、ハーディはクスクス笑う。
「お似合いだと思うけど」
「絶対嫌。そもそも、私は恋愛になんて興味ないの。ハーディも知ってるでしょ?」
 ムキになって否定するカミリアに、ハーディは困ったように笑う。彼女にも子供扱いされている気がして、何かいい言い訳はないかと考えるも、思いつかずに諦める。
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