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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
 ラウルに連れられ、中庭に出る。中央は芝生が広がり、それを縁取るように様々な花が咲いている。隅にはベンチも置いてあって、ベンチの上にはナイフと同じサイズの木刀が2本置いてあった。ラウルは木刀を手に取ると、1本カミリアに手渡す。
「ナイフの扱いは僕が教えよう。今日は基本からだ。握り方は3つ。逆手に持つアイスピックグリップ、親指を伸ばしてナイフの背に置くセイバーグリップ、親指も握るハンマーグリップ」
 ラウルは説明しながら、ナイフを持ち方を次々に変えていく。鮮やかな手つきに、カミリアは思わず見惚れてしまう。

「こんなにはやくやる必要はないから、ひとつずつ覚えていって」
 今度はひとつずつ丁寧に握り方を変えていく。カミリアはそれを見ながら、ナイフを握り変えていく。最初はアイスピックグリップからセイバーグリップに変えるのに苦労したが、少し練習しただけでスムーズに持ち変えられるようになった。

「握り方はほとんど完璧だね。どのタイミングでどの握り方に変えていけばいいのかは、戦っているうちに分かってくるはずだよ。時間が惜しい、早速始めようか。好きなタイミングでおいで」
 ラウルは足を肩幅程度に開き、自然体で立つ。カミリアはアイスピックグリップで握ると、ラウルの肩を狙った。ラウルは既のところで1歩横にずれ、カミリアの木刀を弾いた。長剣とは違う衝撃に、カミリアは思わず木刀を手放してしまう。

「長剣のことは一旦忘れて。距離感も全然違うからね」
「そうね……」
 カミリアは木刀を拾い上げると、再びラウルに斬りかかった。

 2時間後、カミリアは芝生の上に座り込む。慣れない木刀に苦戦したものの、心は晴れやかだ。
「大丈夫?」
 差し伸べられた手を掴んで立ち上がる。
「大丈夫。ナイフは難しいけど、楽しかった。ありがとう」
「どういたしまして。汗を流しておくといい。僕は書斎で仕事しているから、何かあったらルナに案内してもらうといい」
 ラウルは木刀を回収すると、カミリアと一緒に屋敷の中に入る。2階でラウルと別れ、自室に戻るとサージュがいた。テーブルには食器が並んでいる。
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