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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
「あぁ、そうだ。我々はシャムス人だ。髪色だけで虐げられ続け、働き先も見つからない。生きる希望を失っていたところを、ラウル様に助けていただいた」
「私は、孤児院にいました。黒髪だからって院長にも他の子供達にもいじめられていて、辛かった……。埃だらけの屋根の裏に閉じ込められて、飛び降りようとした時、ラウル様が私を引き取ってくれたんです」
 ふたりの過去に、胸が締め付けられる。彼らのような被害者をなくすためにも、この任務は成功させなければいけないと、改めて思う。

「月並みの言葉しか言えないけど、ふたり共、大変だったのね……。私はふたりほど大変な思いはしてことなかったけど、女だからって好きな勉強を堂々とできなかった。せっかく綺麗なブロンドに産まれたんだから花嫁修業をしてなさいって、やりたくもない家事ばかりさせられてきたわ。ハーディという親友がいるんだけど、彼女は黒髪だから関わるななんて言われてきた。けどね」
 カミリアは言葉を区切り、息を整えた。

「そんなの馬鹿げてるって、ずっと思ってた。髪色がなんだと言うの? 未婚の子がなんだと言うの? どんな髪色でも、どんな産まれでも、尊い命に変わりはない。だから私はシャムスを変える手助けをするために、ここにいるの」
 力強く言うカミリアに、ふたりは顔を見合わせる。カミリアの言葉に嘘はないと判断したのか、ふたりは頷いてカミリアを見つめる。

「貴女が鎧を着ている姿は、私とルナ、御者しか見ていません。どういった事情があるのかは知りませんが、ラウル様の顔に免じて、貴女がシャムスの騎士であることは黙っておきます」
「ありがとう、オネスト」
 安心しきって笑みを浮かべると、オネストはそんなカミリアを睨みつけた。
「勘違いしないでください。私は貴女を信用しきったわけではありません。ただ、大事な任務があるのでしょう? それにラウル様も関与している。それなら、邪魔をするわけにはいかないと思っただけです。あくまでも、ラウル様のためですから」
「もう、素直じゃないんだから。カミリア様、私はカミリア様を信じます」
 ルナはモノクルをかけなおすオネストを小突くと、ほころぶような笑顔を見せた。ふたりの言葉に胸と目頭が熱くなる。なんとしてもこの任務をやり遂げると、心の中でふたりに誓う。
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