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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
 少しの沈黙の後、紗英子が静かに言った。
―判った。私もどうせ、そのつもりなのよ。こうと決めたら、少しでも早い方が良いと思うのは同じ。でも、今は年末だし、とりあえず年明けを待ちましょう。 
―時間が経つのがこれほどもどかしく感じられたことはないわ。
 かなりの酒量を過ごしたので、呂律(ろれつ)も怪しくなっていたに違いない。
 やあやあって、紗英子が気遣わしげに問うてきた。
―大丈夫? お酒、飲んでるのよね?
 当たり前よと怒鳴ってやりたかった。こんなことは、とことん酔っぱらって正気を手放してしまわなければ、決断なんてできない。あなたを長年の親友だと信じていた私に、あなたはそれほどのことを要求してきたのよ。その自覚はある?
 だが、有喜菜はそうしなかった。ただ感情の高ぶりを無理に封じ込んで言った。
―少しね。
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