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また桜は散り過ぎて
第5章 常連の仲間入り
 ここにくるのは今日で4回目。オープンしてからまだ1ヶ月なのに。
 客が極端に少ない閉店2時間前。
静かな店内で思い思いの時を過ごす客に混ざって私も気分次第の時間を過ごしてきた。
二度目の時は閉店近くまで居座ったし、三度目は30分で帰った。
今夜の客は、私をいれて2人だけ。これまでで一番静かな店内だ。
・・明日は休みだし、ケーキを晩御飯にしてもいいかなぁ・・
 まだ食事はしたことはない。
ケーキを食べたいと思う時もあるが、夕飯の前にたべてしまったらと躊躇する。
だけど今夜は休みの前日。
金曜の夜は、なんでもありだ、と自分を甘やかす夜。
夜中にお腹がすいたら冷食のパスタでも食べればいいし。よし、今夜はケーキだ。
 心に決めて注文の時を待つ。
小さく手を上げると、小西さんもまた小さく肯いてカウンターを出ようとする。
そのタイミングで、私以外の唯一の客が伝票を手に立ち上がった。
先に会計を済ませ、帰っていく客を送り出してから私の元へとやって来た。
「お決まりですか?」
「はい、ケーキセットのシフォンケーキで。飲み物はアイスコーヒーお願いします」
はい、と短い返事で背を向けた小西さんだったが、
一歩を踏み出す前に私の方へと向きなおった。
「あの、よかったら、チャーハンも食べませんか?」

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