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Memory of Night 2
第2章 秘密のアルバイト

 運転席の女性は先ほど宵をかばったローズの従業員だった。
 如月春加(きさらぎはるか)。薄茶で緩くウェーブのかかったセミロングの髪。切れ長の目も色素が薄いのか茶色がかっているが、その縁は黒いアイラインで囲われていた。色の白い肌。唇は真っ赤だった。美人ではあるけれど、目や口元のみ強調する奇抜なメイクをしているようにも感じるのだった。

「あと、本名も名乗るの禁止してるだろ?」
「……聞かれたから、つい」
「翡翠(ひすい)。源氏名まで決めてやったのに」
「悪かったよ」

 春加との出会いは一ヶ月ほど前だ。高校帰りに突然声をかけられたのだ。
 時給のいいアルバイトがあるけどやらないか、というようなものだった。そこで渡された名刺には、春加の名前とローズという店名が載っていた。
 仕事内容は、ドリンクを運ぶだけ。時間は九時半までで、週三日から働けるという。時給は二千円。長く働いてるうちに、上がっていくからと春加は言っていた。
 正直怪しいと思わなかったわけではない。ただ居酒屋だというし、学校から少し遠かったが、春加が送り迎えもしてくれるというので働いてみることにしたのだった。
 源氏名を提案された時にまさかとは思ったけれど、ハプニングバーとは、宵の予想の斜め上だった。
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