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Memory of Night 2
第22章 交渉

「信用……してるよ」

 ほんの一瞬言葉に詰まる。

「ふーん」

 春加は自分の組んだ足に頬杖をつき、しばらく晃を見つめていた。

「あんまがんじがらめに束縛しても、逃げられるだけだぞ」
「……余計なお世話です」

 アカの他人である春加にそんなことまで言われたくはない。
 そうは思うのに、図星を指されて動揺している自分にも、晃は苛立った。

「で、本題は?」
「あ、そうだったな。まずは礼から。この前はポールダンス見にきてくれてありがと。花まで用意していただいたようで」
「……別に。電話してきたのはそっちでしょ」

 その時も、どこか挑発するような口ぶりだった。予備校の日に留守電に入っていたのだ。ショーに出るから見に来いと。宵に指摘された通り、無視をすれば良かった。
 だけど、春加の口ぶりには裏があった。過激なショーになるから、客層や店の雰囲気が知りたいなら来い、そんなニュアンスだった。
 ショー自体は普通のポールダンスだったが、確かに店の雰囲気は知れた。人でごった返したローズの店内は、昔晃が会員だった時よりもだいぶ治安が良くなっているように思えた。
 それを見せたかったんだろう。

「杏(あんず)の花なんて、なかなかチョイスしないよな。好きなの?
 それともなんか、あの花に意味あんの?」
「さあ、どうですかね」

 杏の花言葉は、疑いや疑惑。春加に抱く感情そのままだ。
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