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Memory of Night 2
第26章 承諾書

 玄関には、いつも宵が履いている白いスニーカーの他に、黒いピンヒールのサンダルがあった。春加のだろう。
 前回のように大音量でゾンビ映画を観ているなんてことはなさそうだ。
 晃と亮は廊下を進み、部屋の扉を開けた。

「宵、ただい……」
「こんばん……」

 同時に挨拶を口にしようとした晃と亮の言葉が、途切れる。
 飛び込んできた光景が、あまりにも衝撃的すぎた。
 いつも宵と二人で座っているソファには春加が横たわっていた。その上に馬乗りになった宵の姿。
 服こそ着ているものの、またシャワーを貸したのか、彼女の黒い部屋着は乱れていた。腹の辺りが捲れて、地肌が見えている。

「ーーへー、お楽しみ中に邪魔しちゃったみたいだね」
「おやおや、まさか二人がねぇ」

 晃が無感情にそう言うと、亮は正反対に、楽しそうな声でちゃちゃを入れた。

「あ、違うって……」

 宵は慌てて春加の上から退いた。
 だが晃は無表情なまま、告げた。

「俺、実家に帰るわ。残りの荷物はあとで取りに来るから、遠慮せずやっていーよ」
「あー、馬鹿、話聞けって! 誤解だって!」

 その時だった。
 春加が体を起こし、素早くソファから立ち上がって玄関に向かって駆け出した。

「晃、その紙奪って!」
「……紙?」
「春加が左手に持ってる紙だよ! それ、ポスターの承諾書なんだ!」

 とりあえず言われるまま、晃は春加の腕を捉え、紙を奪い取った。
 春加は盛大に舌打ちをする。

「……どういうこと? ちゃんと説明して」

 晃の一言で、とりあえずその場は一旦静かになった。
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