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Memory of Night 2
第33章 撮影旅行前夜

 突然宵のスマホが鳴り、驚いて固まった。
 電話の相手は春加だった。

「……なんてタイミング」

 晃が舌打ちでもしそうなトーンで呟く。

「明日のことじゃね?」

 何か忘れていた連絡でもあったのだろうか。
 宵は通話に出た。

「はい、もしもし?」
「あ、お疲れ。言い忘れてたけど、明日保険証持ってこいよ。一応外泊するし、なんかあっても困るから。晃にも言っとけ」
「へいへい」
「あと……」

 そこで春加は言いよどむ。

「あと、何?」
「……ちょっと晃に代われ」

 宵は言われた通り、晃にスマホを渡した。

「代われだって」

 晃は出たくなさそうな顔だったが、仕方なさそうにスマホを耳に当てた。

「……もしもし?」
「あ、お疲れ。今日やるんだろ、セックス。いいか? 絶っっ対に、見えるとこに痕とか残すなよ! 明日から大事なさつ……」

 晃は無言で通話終了を押した。

「はい、返す」
「……今、おもいきりあっち話してる途中じゃなかったか? 用、なんだって?」

 晃はにっこりと笑みを浮かべた。

「君の体に痕残すなって」
「……タイミング怖すぎだろ」

 まさに始めようとしているタイミングにその内容の電話はちょっと怖い。部屋のどこかに盗聴器でもつけられてないよな、と不安になってしまう。

「今日は痕なんて残さないよ。久しぶりだし、じっくり、丁寧に時間をかけて、気持ちよくしてあげる」

 再び口づけられる。『じっくり、丁寧に時間をかけて』は少し怖かったが、晃の巧みな舌使いには抗えず、宵はすぐに目を閉じ、受け入れる体勢になった。
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