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Memory of Night 2
第33章 撮影旅行前夜

 ーー夜の十時過ぎ。春加のスマホが鳴った。予想通り着信の相手は亮だった。

「店は大丈夫だった?」

 開口一番そう尋ねてくる。

「大丈夫も何も、客なんてほとんど居なかったよ。クリスマスイベが今年の集客のピークだね」
「まあ、だろうね」

 頷く気配がする。
 毎年そうだ。秋から冬にかけては、ハロウィンやクリスマスが一番盛り上がる。

「そっちは?」
「こっちも順調だよ。機材や撮影用の小道具一式の搬入は昼間のうちに終わったし、土方さんや他のスタッフさんたちにも挨拶した。予報を見る限り、雪で交通が麻痺するなんてこともなさそう。明日はみんなの引率よろしく、ハルちゃん」
「……はいよ」

 亮はすでに土方と一緒に、撮影場所である土方の別宅に行っていた。
 店の閉店作業は春加が任されていた。客の引きも早かったので、九時過ぎには店を閉め、生ゴミなどを運び出し、金庫や防犯カメラ、戸締まりなどを念入りにチェックし、先ほど帰宅したばかりだった。

「飲み過ぎて寝坊しないでね」
「今日は飲まないよ、さすがに」

 明日八時に駅に集合し、新幹線に乗る。切符は予め準備していたが、寝坊して逃すわけにはいかない。酒は控えた。

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