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フレックスタイム
第4章 孤高の女
「お母様、素敵な方ですね?
すごく自立している感じがしました」


「うんうん。
しっかりしてるよ?
ちょっとだらしなくて、
矢鱈モテるオヤジを上手いことコントロールして、
一緒に会社を大きくしてきた強い女性だよ。
そんでもって、
そんな母さんに、
百合はすごく、気に入られていたね?」


「そうかしら?」


「時々、顔を見せに行ってくれるかな?
とても喜んでいたから」


私は頷いた。



その後の土日で、
社長がゴルフ等で不在の時は、
ケンを連れてお母様の処へ行くことが多くなった。

新宿から小田急線の特急に乗って、
その後はタクシーに乗ったり、
可愛らしい江ノ電に乗ったりした。

美味しそうな和菓子や、
お重に詰めた手料理を持っていって一緒に食べたりした。


近くの神社仏閣や、
江ノ島の水族館にも足を伸ばすこともあった。


ケンなりに気を遣うのか、
グランマと話をする時は、
日本語を使うようにしていたのが微笑ましかった。


遊び疲れて、ケンが眠ってしまった時だった。

「百合さん…
ケンちゃんの出生のこと、聞いてるでしょう?
わたくし、心が狭いのかしら?
どうしてもあの女が浮かんでしまってね。
心の底から愛せないような気がしてしまって、
遠ざけていたの」

「私は…赤の他人ですけど、
ケンはとても優しくて頭が良い子だと思います。
それは、お父様である社長と、
一緒に過ごしてらしたお母様のお気持ちと育て方の賜物だと感じてます。
葛藤があるのは、人間ですもの。
当たり前です。
でも、葛藤するのは、愛しているからこそ、
苦しいのではと…。
ケンは、グランマのこと、大好きで、
家でも絵を描いてくれます。
いつも笑顔で、綺麗なお着物、お召しになっている絵なんですよ?」

「百合さん…
あなたがクッションになってくれて、
わたくし達を包み込んでくださるなら…
ひとつの家族になれそうな気がしますの。
考えてみて?
それなら、わたくしも、
あの家に帰れるわ」


「でも私…。
社長の部下ですし。
それに死別とはいえ…」

「あら。
翔吾さんなんて、2回も離婚してるのよ?
それこそ、百合さんのご両親様、
お許しくださるかしら?」と笑った。

「元の夫との事も、
社長に話せてないんです」

「そんなことどうでも良いわよ?
少し、わたくしは噂話で聞いたけどね?」
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