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フレックスタイム
第7章 入籍と過去の女
「百合さん?
あのね、家にあの女が突然来たの。
鍵を変えてなかったのね?
ドアを開けてズカズカと。
それで、ケンを連れて行くと言ってきかないのよ」

「判りました。すぐに戻りますから、
ケンを引き留めてください。
お願いします」と言うと、
ノックをして社長室に入った。

中には伊藤室長も居たが、
一刻の猶予もないと思い、
結論から言った。


「翔吾さん!
至急の案件が出来ましたので、
この後のご予定、伊藤室長と調整して全てキャンセルしてください。
弁護士さんにご連絡して自宅に呼んでおきますので、
翔吾さんもなるべく早く帰宅してください。
前の奥様が今、自宅にいらしていて、
ケンを連れ去ろうとしてますので、
私、一足先に帰宅します。
私がなんとかしますが、念の為、なるべく早く帰宅してください。
お願いします」

それだけ言うと、
先にタクシーに乗って、
車の中で、会社でお世話になっている弁護士さんに電話を入れて、
急で申し訳ない事を詫びつつ、
必要書類を持って翔吾さんの自宅に来ていただけるようお願いした。


帰宅すると、
リビングでは、
ケンがお母様にしがみついて、
古川さんがソファに座る派手な女性を睨みつけていた。

ケンは私を見ると、
「リリィ!!
この人、僕の手を引っ張って連れて行こうとしたの。
僕のマミーは、リリィだよね?」と言って、
しがみついて泣き始める。

「ケン、男の子は泣いちゃダメよ?
私とグランマを守らないとね?」と言って、
頭を撫でて額にキスをすると、
真っ直ぐその女性を見て言った。



「貴女は、どなたですか?」

「なっ!?
私は翔吾さんの妻で…」

「もう、離婚されましたよね?
でしたら赤の他人ですよ」

「でも、ケンの母親よ?」

「日本語、判らないんですか?
何なら英語で説明しますか?
もう一度、言いますね?
貴女は離婚したので、赤の他人です。
勝手に以前の鍵を使ってこの家に入ったとしたら、
刑法130条の住居侵入罪にあたりますので、
3年以下の懲役または10万円以下の罰金になります。
更に、嫌がるケンを連れて行こうとするなら、
監護者である翔吾さんの同意もありませんので、
未成年者略取及び誘拐罪になりますよ?
刑法224条で、懲役刑ですね?
警察呼ばれる前に出て行って頂けるなら、
告訴はしませんので。
どうされますか?」
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